【特養と老健】働きやすいのはどっち?違いを解説!
介護職として転職や就職を検討されている方で「(特養)特別養護老人ホーム」「(老健)介護老人保健施設」働きやすいのはどっち?違いは何?と悩まれているのではないでしょうか?
特養は主に「社会福祉法人」、老健は「医療法人」が運営していることが多く、介護業界の中ではトップクラスの給与や手厚い福利厚生も期待でき、介護職の求人数も多いため、人気のある転職や就職先です!
しかし、特養と老健では、介護保険上の役割が違うため、対象となるご利用者や職員体制、仕事内容などに違いがあり、よく理解しないまま転職や就職をすると「なんか合わない」「失敗したかも」と感じ悩んでしまう可能性があります。
この記事では、そんな悩みを解決するため「特養と老健」の役割や給与、職員体制などを徹底比較します!
私が介護業界で長年経験しているリアルな現状も併せて解説していきますので、ぜひ参考にして下さい!
【特養と老健】介護保険上の役割の違いを比較!
はじめに理解する必要があるのは「介護保険上の役割」が違うため、対象とするご利用者や仕事内容などが異なります。
特別養護老人ホーム | 介護老人保健施設 |
---|---|
長期間「終の棲家(ついのすみか)」として生活する施設 | 短期間リハビリをして「在宅復帰」を目指す中間施設(在宅復帰=自宅にて元の生活に戻ること) |
特別養護老人ホーム(10,823事業所:令和4年4月現在)
在宅生活が困難となった方が「終の棲家」として長期的に生活ができる施設です。施設内で人生最期の時を穏やかに迎えることができるよう「看取り介護」が充実して来ているのが特徴です。
平均在所期間は1,177日(約3.2年)
一般的に特養の住所に移す必要があります。
特養がある市町村以外からも入所も可能です。
(住所地特例=特別養護老人ホームなどの介護保険施設に入所し、住所をその施設所在地に変更した場合は、住所変更前の市町村を保険者とする特例が設けられている)
「A市」から「B市」の特養に入所した場合。介護保険(保険者)は「A市」のままとなります。75歳以下の国民健康保険の場合も同様に「A市」のままとなります。
大都市部に多いケースとして、特養が少ないため少し離れた市町村にある特養へ入所することがあります。
介護老人保健施(4,230事業所:令和4年4月現在)
病院等から在宅には直接戻れないため、短期間(3ヶ月~6ヶ月程度)リハビリをして「在宅復帰」を目指す中間施設です。医師、看護師、リハビリ専門職など医療系職員が多く、リハビリを目的とした施設が特徴です。
老健のタイプは5つに分かれています。
在宅復帰を支援する機能が高い順に「超強化型」「強化型」「加算型」「加算型」「その他型」となっています。
平均在所期間は310日(約0.8年)
近年、国の方針で老健は在宅復帰を強化するため「超強化型」「強化型」は平均在所期間が短くなっています。
一方で「加算型」「その他型」は平均在所期間は長くなっている傾向にあります。
(在宅復帰の「在宅」とは=自宅、グループホーム・有料老人ホーム・サービス付き高齢者住宅等)
住所地特例の対象施設ですが、短期間での入所が一般的のため、住所を移すことはありません。
他市町村から入所するケースもありますが「在宅復帰」を目指すこともあり、自宅近くの老健に入所する場合が多いです。
【特養と老健】対象となるご利用者の違いを比較!
介護保険上の役割が違うため、対象となるご利用者が異なります。
特別養護老人ホーム | 介護老人保健施設 |
---|---|
要介護3以上 | 要介護1以上 |
【特養】平均要介護度:3.94
要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
---|---|---|---|---|
1% | 3% | 26% | 40% | 30% |
【老健】平均要介護度:3.2
要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
---|---|---|---|---|
12% | 19% | 24% | 28% | 16% |
特養は要介護1・2の割合4%と低い!
老健は要介護1・2の割合31%と高い!
「在宅復帰」目指す、老健の方は要介護1・2割合が高く、軽介助者を多い。介護職にとっては体力的には良い面があります。
【特養と老健】介護職員の平均給与を比較!
【特養】【老健】は介護業界ではトップクラスの給与です!
早速比較していきます。厚生労働省が発表している「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果157ページ」より引用しています。
介護職員の平均給与(保有資格別)
(保有資格) | 特別養護老人ホーム (平均年齢) | 介護老人保健施設 (平均年齢) |
---|---|---|
全体 | 348,040円(41歳) | 339,040円(41.9歳) |
介護福祉士 | 360,840円(41.5歳) | 349,850円(42.5歳) |
社会福祉士 | 385,790円(37歳) | 343,780円(32.8歳) |
介護支援専門員 | 414,760円(46.5歳) | 397,600円(46.8歳) |
実務者研修 | 320,450円(40歳) | 309,650円(37.7歳) |
介護職員初任者研修 | 335,190円(42.8歳) | 315,700円(42.6歳) |
保有資格なし | 291,940円(35.8歳) | 279,050円(37.7歳) |
平均給与は「特別養護老人ホーム」が若干高いようです。介護業界ではトップの平均給与でした!
介護職員等の処遇改善
近年では介護職員等の処遇改善により徐々にですが、給与アップしています!
介護職員処遇改善加算【プラス1.14%】
介護職員等特定処遇改善加算【プラス2.13%】
介護職員等ベースアップ等支援加算【プラス1.13%】
現行では3本の処遇改善加算があり、給与が近年向上しています!
令和6年4月には介護報酬改定が予定されており、更なる「介護職員等に対して処遇改善」を期待!
地域や法人によって異なることが多いため、介護求人票や転職エージェント(アドバイザー)に必ず確認してください!
確認するポイント
- 介護職員処遇改善加算等を取得しているか?(ほとんどの施設で取得しているが、逆に「取得していない」施設はブラックの危険があるので注意!)
- 夜勤手当(1回5千円~1万円など。施設によって遅番や早番、休日、祝日手当などが存在する)
- 資格手当金額(たとえば介護福祉士1万/月・社会福祉士1.5万/月など)
【特養と老健】人員配置の違いを比較!
特養と老健では人員配置基準に違いがあります。介護職員として働く上でも看護職員やリハビリ職員との連携が大切です。
人員配置の違いが分かると「特養」「老健」どちらが働きやすいか整理することができます。
介護職員の仕事内容を詳しく解説していますので知りたい方はチェックしてみて下さい。
人員配置基準(利用者定員100名の場合)
(項目) | 特別養護老人ホーム | 介護老人保健施設 |
---|---|---|
医師 | (非常勤)1名以上 週2~3回往診 | (常勤)利用者100:1以上 老健施設長(管理者) |
介護・看護職員 | 利用者3:1以上 ※介護職員31名程度 ※看護職員3名程度 | 利用者3:1以上 ※介護職員25名程度 ※看護職員9名程度 |
看護職員の夜勤 | なし(オンコール) | あり |
理学療法士(PT) 作業療法士(OT) | なし | 利用者100:1以上 |
機能訓練指導員 | 1名以上 | なし |
生活(支援)相談員 | 常勤1名以上 利用者100:1以上 | 利用者100:1 |
介護支援専門員 | 常勤1名以上 利用者100:1以上 | 常勤1名以上 利用者100:1以上 |
薬剤師 | なし | 実情に応じた適当数 (300:1を標準) |
(管理)栄養士 | 1名以上 | 1名以上 |
介護・看護職員の配置基準はどちらも「利用者3:1名以上」と変わらない。
しかし、介護・看護職員の割合でみると「特養」は介護職員が多く、「老健」は看護職員が多い。
介護職員・看護職員の配置(ポイントは夜勤体制)
介護・看護職員 | 【特別養護老人ホーム】 利用者3:1以上 ※介護職員31名 ※看護職員3名 | 【介護老人保健施設】 利用者3:1以上 ※介護職員25名程度 ※看護職員9名程度 |
看護職員の夜勤 | なし(オンコール) | あり |
ポイントは夜勤に看護職員がいるのかです。
老健では1名は看護職員が夜勤をしていることが多いです。
多くの特養介護職員にとって「夜勤時のご利用者急変対応」が大変で辛い思いをしています。
看護職員が夜勤していることで、医師への連絡や救急車対応はとても安心です。
特養では夜間帯は看護職員不在のため「オンコール体制」を取っていることが多いです。
「オンコール体制」とは=ご利用者の急変等があった場合、介護職員(夜勤者)は看護職員へ電話等で連絡し「指示」を仰くことです。
- 介護・看護職員の裏話
配置基準「利用者3:1」ではとても現場は回りません。多くの施設は「利用者2:1」程度で多く人員配置しています。
「老健」は、医療職(医師、看護職員、リハビリ職)の比率が高くなります。「特養」比較すると「医療」を重視したサービスを提供している傾向があります。介護職員にとっても安心ですが「看護職員」の方が発言権や決定権など強いようです。
もちろん「特養」でも同様の傾向はあります。
【特養と老健】退所者状況を比較!
平均在所日数と退所状況を比較することで具体的に理解することが出来ます。
【出典】令和元年介護サービス施設・事業所調査結果/厚生労働省
特別養護老人ホーム | 介護老人保健施設 |
---|---|
平均在所日数 1177.2日 | 平均在所日数 309.7日 |
死亡による退所割合 69% (施設内での死亡65.1%) (入院先での死亡34.9%) | 死亡による退所割合 10.6% (施設内での死亡92.9%) (入院先での死亡7.1%) |
家庭復帰の割合 2.2% | 家庭復帰の割合 36.3% |
特養は「終の棲家」として役割、約7割の方が死亡による退所です。看取り介護も充実しているため、介護職員にとっても大きな学びとなることでしょう。
老健は「在宅復帰」として役割、約3割以上の方が家庭復帰による退所です。リハビリ等により家庭復帰する姿は、介護職員にとっても大きな喜びとなることでしょう!
(老健は医療機関への退所も多いため要介護高齢者を在宅復帰させる難しさを感じます!)
まとめ【特養と老健】結局どちらがいい?
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
給与面で考えるなら「特養」
体力面(要介護1・2の割合が多い)や夜勤に看護職員がいた方が安心と考えるなら「老健」
看取り介護は介護職員としても人間としても大きな学びがあるため、それを魅力と考えるなら「特養」
在宅復帰を目指すことは、リハビリの知識や在宅介護への工夫、知識(手すりの位置、段差解消方法など)大きな学びがあるため、それを魅力と考えるなら「老健」
ご自身が魅力と感じた方が「答え」です!
魅力こそが「働きやすい施設」となることでしょう!
今回紹介した内容を参考に、介護職員として転職や就職を成功させてください!